冬の花火

最後にみた貴方の横顔は花火に照らされて

滲んでよく見えなかった

手を伸ばせば触れられる距離にいるのに

どうしてもこの数センチが縮まらなかった

秋の金木犀 冬の香り 春の訪れ

そこに貴方はもういなかった

あの日、数センチの勇気があったなら

隣で夏の花火を見ることができたのだろうか

そんなこと知る由もないけれど

なによりも貴方のいちばんになりたかった

貴方の笑顔の理由になりたかったし

私がいないとだめだって思わせたかった

「どう頑張っても手にいれられない女の子」になりたかった

一度貴方のものになったらもう

「手の届かなかった憧れの女の子」にはなれない

そうなりたかった

あの子が手に入れたもの全部奪いたかった

「好きだけど叶わなかった相手」になりたかった

貴方のすべてを奪いたかった

甘酸っぱい感情も、苦しい気持ちも、

諦めようとした夜も、あの子に抱いた感情全部。

 

 

 

 

みんなが好きな、みんなの求める、

綺麗な夏の花火になりたかったの。

 

 

 

 

 

 

 

冬の花火じゃ意味がない